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発声練習

今回は、前回までと方向を変え、声の出し始めで脱力だけを意識せずに、むしろ喉を開くように指示した。
喉奥を拡げるようにするために、下あごを下ろし声を出し始めることを低音から始めた。
例えば、楽器ならチェロの一番太い弦を弾くときに、どのような感覚で弓を擦るだろうか?
このように歌声を聴くよりも、器楽曲特に弦楽器を聴く方が声楽の器楽的な感覚を養うのに良い、という話をした。

トスティ50番中声用から10番

譜読みはほぼ出来ているが、声がしっかりしない状態。
発声練習でやったように、声の出し始めを喉を開けて声を当てる意識で出し始めるように指導。
何度か通して、上手にできるようになった。
特に高音への換声は、彼は4点Dなのでここへのフレーズの上昇時に喉をさらに開ける意識を持つこと。
今までも何度か指摘しているが、息の力でやらないこと。
喉仏下両側の小さな筋肉の緊張感を意識すると良い。

イタリア古典歌曲集 Tu lo sai

全体にノーブルなバリトンの歌声で好感が持てる歌唱に育っていた。
惜しむらくは最後に出てくるフレーズの高音発声。
これも換声の方法を練習。

トスティ「君なんか、もう」

これも全体に良い歌唱に育ったと思う。
2節あるうちの、それぞれ後半の長調に転調してからの高音発声を何度も練習した。
これもおおよそ4点D以上の音域の換声のやり方に特化した。
彼はA母音が浅くなりがちなので、少しOのように意識した方が良い。
それから顔が前に出ないように後頭部が背中から真っすぐにある位置を意識すること。
レッスンでは、私が声を出して真似てもらうと出来る面があるのだが、その感覚を自身で明快につかむのが難しいようである。
これは、彼自身の練習によってある日に会得出来る場合が多いので、独習も必須である。

信時潔 歌曲集「沙羅」より「丹澤」

私が教えたことだが、喉がやや浅いが明るい声で歌いとおしたのが1回目。
これはこれで悪くないのだが、バリトンソロとしては、その声が少し軽すぎる、と感じた。
この音楽が持つ性格が与えてくれるイメージもある。
発声面で言えば、やはり発声練習で練習したように、しっかり喉を開けて深い声を出してほしい。
ただ舌根に力を入れて、モガモガすた団子声にならないように注意が必要である。
だが、全体にこの発声はすぐに実行出来ている。
課題は、やはり高音発声である。
換声の技術を覚えることが課題である。
最初から良く響くことを狙うよりも、喉が高くない締まらない歌声を覚えてほしい。