発声としては、中低音域はやや喉を下げる傾向が強めなので、気をつけないと
ピッチが♭気味になること。
もう少し浅めに当てることや、軟口蓋側の高い所から声を発する意識を持つこと。
それは、声を出す瞬間に声帯が開いていることが大切。
声を出す前に、あくび状態にするというのは、必要以上に喉を下げることにある
のではなく、声帯にわずか開きを持たせて息をほんの少し混ぜた発声にすることで
響きが高く出てくる傾向になるからである。
いわゆるッア~というように声帯を合わせ過ぎて出さないように。

コンコーネ50番と25番を練習した。
25番はさすがに難しい。私も歌ってみたが難しい。
マルカートで高く上がるフレーズなど、途中の音がこもってしまい聞こえなくなる。
当てるときに極力喉を掘り過ぎないで、声を前に高く当てること。
下顎や舌根の力みに注意。
曲は中田喜直の6つの子供歌から。
注意すべきことは、やはり中音域のピッチ。
ほんのちょっとのピッチで印象が激変するので、中音域のピッチ、そのための発声に留意して欲しい。

最後に蘇州夜曲をファルセット、というかいわゆるカウンターテナーでやってみる。
この楽譜のままでファルセットはちょっと低いので1音ほど上げてやると良いだろう。
なかなか面白い味わいになるので、ぜひトライしてもらいたい。
ファルセットにしても、きちんとお腹から息を送って支えのある声を常に意識して欲しい。

はらさん

伴奏合わせ。武満徹の作品3曲。
「○と△の歌」こちらは歌謡曲風。彼自身の楽しい歌詞で、こういう歌は直裁に楽しく歌うしかないが、意外と難しい。
日本語だし、どう歌っても構わないが、自分が歌っていることを自分が良く判って冷静にイメージ出来ていること。
この歌詞など単純なので、手振りをつけるのもそういう意味で良いことだと思う。地球が丸くてりんごが赤くて
砂漠が広くてバラライカが△で、などなど。
「素晴らしい悪女」は、スペイン風のハバネラみたいなリズムで歌うが、テンポが良すぎるとガサガサしてしまう。
せっかく良い声が出ているでの、出来ればモルトレガートでまったりと歌うほうが色っぽくて良いだろう。
顔や姿勢も身じろぎもしないで歌うほうがかっこ良い。
「小さな空」は有名な曲で、美しい。
これはちょっとカスタマイズして1番を伴奏なしのアカペラで初めて、2番に入る前から伴奏を入れてつなげていくようにしてみた。
メロディが強烈に印象的なので、アカペラも充分持つしかえってインパクトがあるだろう。

最後にロッシーニの「婚約手形」の二重唱を聞かせてもらった。
あまり詳しくないが、モーツアルト的な味わいとイタリア的な味わいの混ざった美しい曲だと思う。
声質はコロラチューラとまでは行かないが、レッジェロに良く回る明るい声が要求されるだろう。
彼女の場合、まだ中音域の発声として鼻腔共鳴が完全でなく、下顎、喉側の開きがやや強いために
音程が♭気味になることが、一番の研究課題だと思う。
恐らくこれが出来れば、高音域の声もかなり変わるだろうと思う。

それにしても、以前と大分声の方向が変わってきて、色々なレパートリーがこなせるようになったと思う。
これからが更に期待できる。頑張って!

すぎたさん

今日はいつもより声の揺れが目立った。下顎で喉を掘る傾向が強い。
舌根や下顎で喉を下げるのではなくて、姿勢だけを気をつけていれば、声を出せば自然に喉はあるべき位置に行くという風に
出来れば良いのだが。

しかし姿勢を良くして顎を引いて中低音を出すと、当るし響きが無駄なく、良い感じが出ていた。
基本的に発声練習の際に覚えて欲しいことは、半音ずつで同じタイミングで上がったり下がったりするわけで
合間のブレス時に口の中の状態、あるいはお腹を戻しすぎないで同じ状態を保つことに集中して欲しい。
この場合、お腹はどすんと一に戻さないで、少し下腹部を閉めていたほうが短いブレスだし、特に
高音を出す場合は、頭声が出やすいだろう。
高音の声が重くなって、♭になり易いのは、お腹を元に戻し過ぎてしまうことも原因である。

ヘンデルVadoro pupilleは、全体にブレスが少し不安定だが、安定して歌えている。
あまり力まないで、しかし高音は綺麗にしっかりと、頃合が難しいが、今日のリラックスした歌い方は良かったと思う。
モーツアルトのRidente la calmaは、テンポが速すぎて、ちょっとせからしい音楽になってしまった。
声はとても良い。ブレスも大丈夫なので、ゆったりと優雅に歌って欲しい。
トスティのAddioは、中低音が難しいが、焦らないで発声を最大限尊重して、丁寧に歌いこんで欲しい。
前半のテンポを早くしたところだが、音楽的にテンポが速いのではなく、言葉を語る調子があるからこそ
早くなる、という点を理解して欲しい。
歌詞を語る、という意味である。
ただ単にテンポを速めるのではないこと。

今回の試演会は、勉強会なので、暗譜は強要しないが恐らく暗譜することで、色々な欠点を
テンションで補うことが出来るだろう。
彼女の美点は本番で発揮される、という気がするから。
美点と言うのは欠点を補って余りあるもののことである。
誰しも欠点というか、未熟なものがあるわけである。
勉強、精進は続けて欲しいが、拘泥しすぎないで、やはり気持ちよく歌う心だけは忘れないで欲しい。

きくちさん

今日は、発声練習で再度低い声区の練習と高い声区から交互に上がり下がりというような練習になった。
厳密にいえば、1点b辺りにもう一つあるが、細かいことをやり出すと難しくなるので、単純に1点Fくらいと
2点Fくらいを目処にした。
2点F以上の声は、これもちょっとした加減で細くなったり太くなったりする。
これが、ミックスのし具合なのだろう。あまり考えすぎずに太く意識してもらって、なるべく2点bくらいまで
そのままの声で持って行ってもらいたい。
そうすることで、2点F以下の声区の声を1点Fくらいで出した声からチェンジさせないでも、つながりが良くなって、声区の変化が目立たなくなる。

彼女の場合、超高音の出し方が基本にあって、そのポイントが常に中心に来やすい。
どちらかと言えば楽をすると、この一番細い声区の出し方になるのかもしれない。

今日新しく発見したことは、意外だったが中音域の声を出す際に、お腹を外側に張り出して力んで出していることだった。
多分最初に覚えた方法なのだろう。
力むから一見声が出しやすいし、声量も一見出そうだが、声のコントロールが効かないし、音程が♭になり易いと思う。
何より、力むだけだからフレージングやクレッシェンド~ディミニュエンドが自然に行えないだろう。
ここは、自然に声を出すこと=息を吐く、そのためのお腹の使い方ということで、お腹を自然に中に入れていくというように
変えて欲しい。
高音域はどうなっているかわからないが、意外と高音域でもこの方法は効果があると思う。

曲はモーツアルトDans un bois solitaire から。
発声でやった、中音域をなるべくあるべき声区で歌ってもらうことにした。
ちょっと苦しそうだったが、後々わかったお腹の使い方がマスター出来ればはるかに楽になるだろう。
いずれにしても、やれば何とか声区の問題は解決しそうな状態である。
「夜の女王」のアリアでも、中音域の声区の練習を徹底してやった。
この曲でも中音域もさることながら、2点F以上の声、本当に高い領域意外は、なるべく下の声区とのつながりの良い
しっかりした高音が望ましい。
他の曲でも、あるいは今までも常に感じていた中音域や、高音域でも太く出した場合の、喉の力みに感じられるのが
恐らくお腹の使い方と関係あるのではないだろうか?次回にもう少し細かくやってみたい。

最後にMeyerbeerのDinorahからDinorahのアリア「柔らかな木陰」を聴かせたもらった。
いかにも19世紀のフランス的な香水の匂いふんぷんとしたアリア。
コロラチューラって良いものだなと思った。
ピアノ伴奏を付けて一度きっちりレッスンしてみたいものである。

前回与えたモーツアルトの「後宮よりの逃走」アリアを譜読み。言葉はつけなかった。
しかし高音は絶好調で迫力の在る、とても輝かしい高音が良かった。
彼女の潜在能力の高さには驚く。今後の活躍に大いなる期待をしている。