今日はご主人がお子さん連れで見学。ご主人の見学はなんだか緊張する。(笑)
だから、というわけではないがちょっと厳しくレッスンした。

発声も20分くらいはやっただろうか。
気になったのは、中低音の声を押さないようにするがあまりに、今度はお腹から声がア出ない傾向。いわゆる口先だけで声を出してしまうのが中低音。
それから、2点C以上の声で、喉で押して、エイヤ!と出してしまう傾向。
この2つが気になった点。

一番大事な点はチェンジ以降の声では、今は息を混ぜた響きを出すことと、そのことに関係するが喉を深くして行くこと。
逆に中低音は、喉はある程度深いが響きを集めて前に出そうとすること。
この2つを常にフレーズの中で柔軟に実行できるようにすること。

母音では、ウの母音が上記のことを練習しやすいと思う。唇を前に突き出すようにしていくと、喉が開くだろう。
高音になるほど、喉を深く広くして行くことと、中低音ほど頬か鼻根に向けて集めて前に出すこと。

大体2点Dくらいから徐々に深い意識を持つと良いだろう。
もっと高くなったら、更に口先を開いて行けば良いだろう。

中低音は、前回の声の方が良かった。
こちらも色々言って迷わせて悪かったが、鼻腔共鳴をあまり気にしないで、喉を開いてお腹からの声を出すことを一番大切にして欲しい。
喉がリラックスしていて、喉の開いた深みのある中低音から作っていくべきだろう。

コンコーネは24番を練習。
こちらもほとんどが声のことになった。
特に、高音のチェンジ領域に上がる際に、喉で押さないで柔らかく息を混ぜて滑らかに上がるように。
それは喉を締めて力で押すのではなく、上がろうとする際に喉を開くようにして、息の力で上がるようにである。

イタリア古典がPur dicesti o bocca bella.と、Se florindo e fedele
歌詞を付けて、上記の発声の点を注意して練習した。
この辺りの曲は、もう少し発声が落ち着いてきたら、高声用でもう一度やり直してみても良いだろう。
それで初めて高音が上手く対処出来るようになると思う。

ふかやさん

今日も前回に引き続き、発声を中心のレッスンとなった。
このところ、ようやく発声のコツ、大事なことを掴みつつあるのだが、まだ分かっていないな、と思う部分もあるので。
クラシックの発声の最大の注意点は、喉を合わせる感覚よりも息を使って響きを出す、ということ。

これは、いわゆる邦楽などで声帯をびっちり合わせて、あたかも喉から(お腹を使うのだが)出す発声と大きく違う所。
クラシックの場合、感覚的に言えばお腹の力を使って呼気を送ると頭の中で声が出だす、と言う感覚。
どうして頭からというのか?といえば、彼に限って言えば喉で合わせようとする意識が強いからである。
喉と違う場所で、声が出だすことを大切にして欲しい。

彼が感じるところの、フガフガの声になってしまうのは、喉が上がってしまうことだが、喉を下げようとすると
舌根で下げるために、いわゆる下げ過ぎ、力みに繋がって、今度は高音を出すのが重くなってしまう。
これも、また高音が出づらいし、喉の負担になるだろう。
この辺りのバランスが難しいのだが、喉をお腹と付いた声にするためには、下顎や舌根で喉を下げるのではなく、顎を引いて姿勢を良くすることである。
その分、喉や舌根を徹底して力を抜くのである。
逆に、顎を引くから舌根に力みを入れられないとも言えるだろう。
これらの点をこれからも徹底して覚えて実現し欲しいのである。

TostiのAncoraと、Ridonami la calma
前回の姿勢を良くして出した発声を最初忘れてしまっていたが、徐々に思い出して上手く出来るようになった。
それほど高音のきつくない曲だが、中低音から高音まで力まないで、かつ綺麗に歌い上げることを完璧に出来るようになって欲しい。
そのことがあって、更に難しい高音の曲の喉の対応が分かるようになるからである。
この程度の曲でも、声をコントロールして良い声を出すこと、余裕のある喉で歌うことが出来なければ、更に難しい高音のある曲は対処するのが難しいだろう。

あめくさん

彼女もそろそろ発声法を定めて、もっと歌うことそのものに集中できるようになったもらいたい。
特に今までは中低音の響きが懸案だったが、どうにか方向性は決まりそうである。

単に中低音の響きをもっと声帯を合わせて前に当る声にすることである。
ただそうすると、1点Eから下になると地声になり易いが、彼女の場合その領域だけ注意すれば、そこから上は大丈夫だと思う。

この中低音の出し方は、今までもやったことがあるのだが、高音に繋がるのが難しい、あるいは高音へのつなぎの部分でちょっとでも力むと喉を締めてしまうのが、迷った部分である。
要するに中低音で当てた状態(喉の感覚、位置)を保ちつつ、高音にチェンジしてきたら息を良く混ぜていくことが大切。
ということは、喉を開く、喉を上がらないようにする意識、ということである。
太く、といえば簡単かもしれないが、確かに太くしていくこと、と同時に上、軟口蓋も上げて行くことも大切である。

フォーレの「イスパーンのバラ」
こちら、今日の発声の効果絶大で、そのままで飛躍的に良い音楽のイメージになる。
前回までの声だと、どうもこの曲が何を出したいのか良く分からない音楽になってしまうのだが、今日の声なら言うことはない。
声というのはそれくらいに音楽を左右するから怖いものである。
この曲の高音域もこの方法でもまったく問題ないが、それでも締りが強くならないように、注意して欲しい。

「月の光」は、この声で良いのだが、更に軽くビブラートのない真っ直ぐな当り方を努力して欲しい。
中低音は問題ないが、中間部の表現が難しい。
なぜなら、Au calmeの2点Desの響きが、舌根で力んでしまうからだ。
ここの響きがとても大切。明るくそして力まない響きである。
また、3拍子がここの部分で、どうも上手く行かないこと。
上手く行かない理由が、こちらで理解出来ないのでどうすれば良いか?悩むところ。
もう少し練習を続けてみたい。

そして最後にメッサジェのBasocheからCoupletを。
こちらは2点F前後の高音の響き、少し締まってしまうことが課題だろうか。
中低音の開発途上の発声の問題点を練習するには、丁度良い曲である。

はなむらさん

発声はイの母音で始めてから、アに変化させて練習した。
見ていると思ったよりも、首に血管が浮いていて力が入っているな~と実感。
この高音の力みはまだ時間がかかりそうだが、かといって駄目なわけではない。
良い感じもあるし、彼女のイメージがあり、それが良さに繋がっているのだが、力みを取れるようにしたい。
そのことと関係があるが、喉が締まってしまう点を改善するのが課題だろうか。

良い声を出せる、と思うときもあるし、喉で押してしまうところもある。
特に問題なのは2点F以上の高音域である。
声帯を閉じて当てる癖が強いので、どうしても締まる方向に行ってしまい勝ちである。

喉を開く、という意味がまだ良く分かっていない気もする。
これは、中低音からもう一度発声を組み立てなおしたいところ。
それが一番の早道だろう。
喉が開いて声が出ること、それが高音でも実現できることである。

今日は、後1ヵ月後に迫った「フィガロの結婚」スザンナのレシタティーヴォの練習から。
日本語訳だ。
レシタティーヴォは、まずきちんとリズムで歌えることを練習してから、言葉の抑揚を出していくのがオーソドックスだが
時間もないので、一緒に歌って抑揚をいきなり付けて覚えてもらうことにした。

日本語の抑揚は教えなくても分かると思うが、改めて言うと、子音の出方とか、母音の形とかよりも、言葉のフレーズの抑揚がきちんと出来ていると、お客さんは歌詞を理解できるのである。
抑揚がないと、どんなに子音が出て母音がはっきりしても分からないのである。
要するに日本語の語りの繋がり、フレーズ感があれば良い、ということは、本人が言葉を語る意味をきちんと理解していないと上手く行かない。後は感情的な違いをフレーズによって良く見分けて、それを語りの調子に反映させて欲しい。

マスカーニのAve mariaから。
この曲は、先ずは喉が締まらない発声、と言う面で言えば合格を上げられる歌唱になってきた。
後は、この曲特有のPPの表現に少しでも近づきたい。
そのためには、喉が締まらないで喉の開いた響きを覚えたい所。
特に最後の高音は、もう少しのところである。
そしてモーツアルトのAve verum corpus
こちら、声そのものは、あまり問題はない。
それよりもロングトーンのある長いフレーズの処理。

最後にロイド・ウエバーのレクイエムからPie jesuを少し譜読み。
この曲はフォーレなどのフランス系のサウンドで美しい。
また今後も続けて勉強して欲しい所である。

おまけにMy sweet loveを歌って、さっぱり終わりにした。
発声を考えていたせいか、最後の高音がチェンジしていた。良いような悪いような、難しいところである。
クラシック調で歌うなら歌うということで、そう決めてしまったほうが良いだろう。