TSS

ティリンデッリの「おお春よ」から。
声量が感じられないため、この曲の華やかさとか豊かさがもう一つ出て来ない。
基本的に口先だけの声になってしまっている。
やはり呼吸からやり直さないと、ということで、腹筋を意識した発声。

ブレス時に丹田を締めて行うことで、自然に横隔膜が収縮するという身体の使い方。
横隔膜が収縮すると肺が下方に膨らむことで、内臓が下方に押され、腹壁が膨らむ。

横隔膜が拡がるのではなく縮むことで、肺が縦に膨らみやすい状態になるということ。
横隔膜の働きで、腹壁が四方に膨らむわけではない。

歌う際に、腹壁を保持するように歌うことで、呼気をラフに吐いてしまわないようにすることと、胸郭が開いて喉が開いた状態を保ちやすいという意味がある。

息は発音することで自然に出て行くので、腹壁を押したりする必要はまったくない。
言い換えれば、歌えば呼気は自然に出て行く。
歌って息が吐けないのは、息漏れを恐れたり声の響きに拘泥するからである。

コシ・ファン・トゥッテから「愛の神はいたずらもの」
素直に歌えている印象で、好感が持てた。

イタリア古典からVergin tutto amor
この曲を歌う頃には、声量もついてきて安定した中低音の声と中高音の声のバランスが良くなっていた。

AC

モーツアルトの「皇帝ティトの慈悲」から、ヴィテリアのアリア「今はもう美しい花のかすがいを」
このアリアを課題に選んだのは、中低音の声の響きをより美しくして行くため。
鼻腔に集まった響きを目指してほしい。
口先を開け過ぎないことで、声の響きを軟口蓋から目にかけて通すようなイメージと感覚を持つ。
このことで、声に息漏れが出ないように。
このフォームはあごが前に出ないようにする姿勢もとても重要。

高音は力まないで喉が上がらないフォームを心がけること。

フォーレのLa bonne chansonから、Puisque l’aube grandit
彼女の発声の課題の一つに、換声点の発声がある。
喉を上げないようにすることも一つだが、喉を引き上げることも必要。
彼女の場合は、引き上げが弱い感じ。
引き上げるのは、引き下げる力が働いているから出来るのであって、引き上げだけということはない。

平たく云えば音程を正しく明快に出そう、と心掛ければ引き上げ筋は良く働く。

SNM

マダム・バタフライ「ある晴れた日に」
全体にこの曲に相応しい声、その力が表現されている。
あとは、変化するリズムをイタリア語の語りの意味を捉えて出来るようになるまで、イタリア語の意味と演劇的な意味を良く勉強して組み取るまでになってほしい。そうすれば、テンポの変化が自然に理解出来るようになるはず。
最後の高音は、頑張らないできれいに丁寧に出せば、充分表現出来るので、力まないことが大事。

ジャンニ・スキッキ「私のお父さん」
2点Asの高音のメッザヴォーチェが出色の美しさである。
滑らかに丁寧に歌えるので、価値が高い。

マスカーニのアヴェ・マリア
メッザヴォーチェの美しさが問われる曲だが、フォームが定まるまでは、息漏れの多い声にしてまで小さな声にする必要はない。
ある程度出すレベルを保ちながら、歌いこみを進めて慣れてきたら小さくしてみる、という練習の方向性を薦めたい。

IS

ロッシーニ「舞踊」
ひたすらイタリア語の読みに慣れること。
音符割も難しい面があるので、ゆっくり練習して確実になったら早く読めるように、徐々にスピードアップして、最終的にはこの
指示通りのテンポで歌えることを目標にしてほしい。

木下牧子「風を見たひと」親しみやすい歌い易いメロディで、平易な日本語の詩が心を優しくするように、純粋に歌えている。
良いピアノ伴奏でゆったりと歌えれば、良いレパートリーになるだろう。

モーツアルト フィガロの結婚、ケルビーノのアリア「自分が自分でわからない」
明るい快活な歌だが、歌に秘めた熱い思いは、むしろ暗い情熱だ。
そういうモーツアルトらしい裏腹な表現の相違を出すために、歌はメロディを歌うだけにならないで、歌詞の意味を良く伝えるように歌うと、ちょうど良い表現になる。

MM

発声練習をやると、高音区の発声がとても良くなっていると感じた。
力みがなく、息が楽に吐けているため、音程感の良い声になっていた。
この発声が歌にも使えれば、ほとんど言うことがないくらいであった。

スザンナのアリア、レシタティーヴォから、綿密に見て行った。
基本的には表現なので、明るさや快活さ、という面を、語りで徹底してほしい。
イタリア語で、快活に喋るとどうなるか?楽しく明るく語るとどうなるか?
を出来ている上での歌声である。

アリアの前半は、やはりレガートに滑らかに歌うことを徹底。
後半は最高音の発声が決め手。
最高音は、上顎を持ちあげて息を自然に吐けるような発声になれば、自然に音程の決まった良い声が出る。
そう言う基本レベルは持っているので、喉で力まないこと。

ヴェルディ「運命の力」Pace
ほとんど課題は解決しているが、最後の高音だけ、喉が上がってしまう響きになるのが惜しい。
とはいっても、かなり良くなってはいるのだが。
maledizioneの2点Fを伸ばす声が決まっていれば、喉を動かさないように慎重にして、2点bを喉下の窪みに当てるように跳躍すること。